連休中のフェスティヴァルでは、トリフォニーの東京カンタートびいきの私も、5月2日は有楽町のフォルジュルネにも一枠だけお邪魔してきました。

151番D7の部屋でのエフゲニ・ボジャノフと酒井茜の2台ピアノの会です。
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会場に入ると、ピアノは通常通り2台が向き合って置かれています。普通はその前にそれぞれピアノ椅子、それに譜めくり用の普通の椅子があるはずです。

ピアノ椅子は多くは背なしの革張りの立派なやつ、たまに背付きの練習用のものを好みで使う方もいらっしゃいます。

ところが今回はそれらは無し。ボジャノフの方はマスコミでも取り上げられるくらい背の低いマイチェアを使うのが、少なくともファン、関係者の間では有名。マイチェアというくらいで私的なものかと思えば今回のはFAZIOLIという字が見えました。ファッツィオーリの特注品でしょうか。知らぬ間に皆さまどんどん偉くなるので、このくらいの提供はあるのかもしれません。存じ上げませんが。
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それに対して酒井さんのほうの椅子は譜めくりと同じ普通のオケイスとか呼ばれる、その他大勢様が座るようなシンプルなやつです。譜めくりと全く同じものが2つ並んでいるのがおかしい。確かにこういう高さ調整ができないものは、調整ミスをステージに出て行ってからゴソゴソ直す、などという時々みかけることにはなりませんね。単焦点レンズのようなもので、これで決まり、でやるしかないのはさっぱりしていていいでしょう。

と、椅子からして逆方向で普通と違うお二人、イヤでも期待は高鳴ります。

対談とかもそうですが、二人が慣れ合って、「仰るとおり」「全くそうですね」と相槌をうちあい、最後はお互いに褒めあって終わる、というのでは何のための対談かわかりません。

連弾や2台ピアノも一糸乱れず、一人が弾いているように弾くのは、そういうことができる名人芸は大したもの、という感心には至っても、面白くはありません。

やはり丁々発止、あるいは「合わせているようで綱の引っ張り合い」のようなほうが、手に汗握っていいです。

で、本番は・・・・手に汗握りました。面白かったです。

茜(あかね)さんは別のソロリサイタルでもこういうプログラム。

ヤナーチェク: ピアノ・ソナタ 変ホ長調 「1905年10月1日、街頭にて」
シマノフスキ:マズルカより op.62-1, op.50-20, op.50-1, op.50-4
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 op.81a 「告別」

明確な主張ですね。こういう方とボジャノフが簡単に慣れ合うことはありえないでしょう。

変化に飛んでいるラフマニノフのop.17はもちろんのこと、通常はちょっと長く感じられるモーツァルトのニ長調K.448もあっと言う間でした。

フォルジュルネ型のフェスは楽しいですが、あちこち回っているとどっと疲れます。体力に自信のない方は、あまり混んでいない朝か深夜に一枠だけ見てさっさと帰ってくるのが一番。この日はまさにそうさせていただき、良い後味を残して引き上げました。

と、一瞬通過しただけですが、若いボランティアが多くて会場はいい雰囲気だったと思います。このフェスは時間割を組んで次のに遅れないように動くのは結構たいへんです。そこでエスカレーターなどを歩いたりすると、数年前は厳しく怒られました。「エスカレーターは一列で止まっているのが常識」という理屈が聞こえてきそうでした。今も安全管理には気をつかているのでしょうが、もう少し管理的でなくて明るい感じがしました。
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