昨日は新国立劇場オペラパレスでの松村禎三作曲オペラ「沈黙」初日に行ってきました。同劇場として4回目です。普通のポピュラー演目でさえ4回というのは随分と多い数字でしょう。それが現代音楽で・・・というのですから、ことの大変さが分かります。

現代音楽では「再演が大事」という言葉があります。どんな大家、著名作曲家の作品でも初演だけで終わることが一番多いからで、2度めをやることすら条件が揃わないと難しい、という話です。

それが、さらに最も金も手間もかかる難しいオペラというジャンルでこの回数上演ということが起きているのですから、まあ奇跡のようなものでしょう。

奇跡といえば團伊玖磨さんの「夕鶴」は上演800回を超えているそうで、無伴奏ヴァイオリンソロでも再演できないのにこの数字はどういうことでしょうか。

まあ800回以上というのは桁外れにしても、「沈黙」ももう20回位でしょうか。「夕鶴」に続く地位を確立しつつありますね。

これはスコアのクオリティももちろんですが、どういう体制でどう制作されたかにも随分左右されます。新国立劇場で2つの演出でそれぞれリピートされているのは、この作品が育つのにまたとない機会だったでしょう。しかも前回の中劇場から今回は大劇場へのご出世なのですから。

その大劇場でも結構座席は埋まっていたのですから、大したものです。色々な要素、努力の積み重ねの上でのこの結果ですが、やはり大きいのは内容、ストーリーの「わかりやすさ」ではないでしょうか。

若杉弘さんはリヒャルト・シュトラウスの「影のない女」が大好きで、その理由を「よくわかんないからいいのよ!」とおっしゃっておられまして、確かに直感的に我々でさえ「そうだな」と納得できるお話です。

それはそうですが、やはり何と言っても「わかりやすい」のはより強い。踏み絵を踏むか踏まないかの葛藤は実に明確にわかりやすいドラマでしょう。

音楽もわからない現代音楽ではなく、ドラマにぴったりと沿っていて、きれいな旋律や合唱、可愛らしい子供の合唱すらバランスよく出てきます。

今回の上演は前回と同じく宮田慶子演出、下野竜也指揮のコンビ。新国立劇場の芝居の方の芸術監督でもある宮田慶子の読替えとか七面倒なところのないストレートな演出と、回数も重ね、練り上げられた下野竜也の確信に満ちた棒で、ドラマは一気に進んでいきます。

「意義」で地道なこと(初演や再演)を積み重ねるのも大事ですが、やはり現実に夕鶴に次ぐヒットオペラは欲しい所。せっかく「沈黙」がいいところまできたのですから、みなさんもその仕上げに是非一役買ってください。まだ公演は残っていますから。
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