昨日もサントリーホールで山田和樹指揮の日本フィルでした。サントリーホールと日本フィル共同企画「日本フィル&サントリーホール とっておき アフタヌーン」の第2弾「歌舞伎×オーケストラ」というやつです。

これはオーケストラが他ジャンルと取り組むシリーズで第1弾がミュージカル、第3弾はバレエと続きます。

目的はもちろんファン層を広げること。ほっておけば高年齢層固定化なわけですから、ジャンル的にも年齢層も広げにかかるのは当然のこと。問題は「その結果がどうか」ということにつきます。

アフタヌーンという名が付けられていますが、特徴の一つは開演が午後1時なこと。これなどはファン層を広げる意外な盲点かもしれません。午後の遅い時間、少なくとも2時以降の方が当たり前と思い込んでしまう。

ところが、家の中にケアが必要な赤ん坊なり年寄りがいて世話の一翼を担っている方からすれば、外出した場合ともかく大事なのは「遅くならずに家に帰れる」ということはあるでしょう。夜など論外で、午後でもなるべく早く帰れるに越したことはない。

ホールを貸す側からすれば13時開演15時終演でやってくれれば、もう一つ別の夜公演もこなすことができます。

目覚めが早くなった高齢の方にとっては早目の昼食とか当たり前ですから、どうということもない。

そんなこんなで1時開演というのは結構メリットがあります。私はこの1時開演は大好きで、少なくとも土日の6時開演とかの中途半端なやつよりはるかに気持ちが明るくなります。

そして内容ですが、やはりヤマカズさんはこの手のものもピッタリ。プレトークに出てくるのは当然としても「指揮者の山田和樹と申します」と観客に自分を知らない方はいらっしゃって当然、という挨拶も自然になさいます。

その歌舞伎(踊り)との共演はストラヴィンスキーの「春の祭典」でその前に花のワルツ(くるみ割り人形から)、ロミオとジュリエットというチャイコフスキーの小品2つがオーケストラだけで奏されました。

この種のイベントの当然の押さえとして、この頭の2小品は実にきっちりとした演奏。これを軽く流してしまうのは禁じ手ですから。

休憩後、所作台も設えられていよいよメインのハルサイ。ステージにはLED照明の譜面灯(写真ご参照)が並びます。
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オーケストラが奥に陣取り、その手前が所作台。ですから指揮者はほぼ踊りは見えません。

元はバレエ曲ですが、バレエと一緒だとその動きの都合で、どうしてもテンポが遅くなるところが出てきます。オーケストラだけのバージョンを聞き慣れている音楽ファンは、どうしてもそこがまだるっこしい。

でもこの日のような歌舞伎の踊りでは、バレエほど音楽に細かく合わせる必要も無いでしょうから、音楽的に一番自然なテンポの上に演奏できたように見えました。尾上菊之丞さん振付の尾上右近さんによるソロの舞です。もちろん所作と音楽とはかなり厳密にシンクロしていたでしょうけど。

小節ごとに変わる変拍子を振れる指揮者がそんなにいなくて、その数少ない一人のマルケヴィッチが振ってオーケストラも一生懸命それについて、といった時代も遠く過ぎ去り、今やプロ指揮者はどうということもなく振り分けて、オーケストラも「ゲネプロと本番だけでもいけますよ」というくらいの定番曲になりました。

そんな余裕綽々の曲ですから、慣れ過ぎのリスクを防ぐ上でも、こういう企画は好き嫌いはご自由として、少なくとも刺激は有って楽しめた方が多かったのではないでしょうか。

ラトルが子どもたちとの企画でベルリンフィルでやった映像も話題を呼びましたが、あれこれ手をつけやすい曲ですね。

お客さんは予想通りといいますか、結構入っていました。金曜夜と土曜2時の日フィル定期と同じくらいは、いっていたでしょう。

ゆっくり買い物をして帰って夕食の支度にも間に合います。やはりこの企画1時開演は私は賛成に一票です。

それにしてもヤマカズさんは別宮定期からすぐにこれ。パリ管「ジャンヌ・ダルク」の時は直前はマーラー。クセナキス「オレステイア」のときはサイトウキネン「ジャンヌダルク」からオペラ連発。

と、私が拝見する時はいつもこうですから、要するに年中この調子なのでしょう。アブラの乗り切った時期のようですね。