今回のウィーン滞在最後の夜は、コンツェルトハウスでピアノのイヴォ・ポゴレリッチのリサイタルにお邪魔してきました。

ホールに足を踏み入れると、ステージでピアノに触っている人が。これが調律師ではなくてポゴレリッチ本人なのですね。開場時にこんなことをやるのは、ポゴレリッチとグルダと高橋悠治くらいでしょうか。

開演10分前くらいまで、弱音ですが結構まじめにさらっています。

半袖ポロシャツとセーターを腰に巻いてソックスはウールのチェック、今の髪型は坊主。チリチリロングからオールバックから、髪型も色々とお変えになる方ですが、わたしはこの坊主頭はいいと思いますけど。

その開場時演奏を見に数十人くらいは立って聴衆も集まって、マニアは必死で手をのぞき、普通の人はiPadやスマホで・・・・・
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さて、本番はこういうプログラムです。

リスト:ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲
シューマン:幻想曲ーop.17
--休憩--
シュトラビンスキー:ペトルーシュカ三章
ブラームス:パガニーニの主題による28の変奏曲

何より驚くのはホールに響き渡る轟音。物理的にこんな大音量はそうは聞く機会がありません。クラシックでは「ガンガン弾く」とか「ぶっ叩く」とかはほぼ悪い表現ですが、ポゴレリッチともなれば弱音の方も繊細極まりなくコントロールされているので、強いほうがどんなに強くても文句を言うスキはありません。そのダイナミックレンジにただただ驚きます。

しかも、あの能を思わせるような遅いテンポの部分が多いですから、よくまああんな強烈な音で叩き出し続けられる、と思わざるをえません。

精神力の弱い聴衆は途中で帰るのでは、と思ったりもしますが、これがそうではないんですね。第一、大きなコンツェルトハウスが満員で、味わっている方が多く、エネルギーの交感交流が激しく行われています。

日本でのリサイタルと、こんなに違いの大きい人はなかなかいないのではないでしょうか。大体がサントリーホールとかでも随分空いていることが多いですしね。

シューマンなど、こういう強打でやられると、リストとの共通点がいやでも浮かび上がってきます。

ペトルーシュカ3章も若き日のポリーニの有名なディスクのあらゆる意味で正反対の、爽快でない演奏。

その遅いテンポですから終演も随分遅くなり心身ヘトヘトですが、比類の無いものを味わった充実感は残ります。天才健在でした。