一昨日は東劇でのMETライブビューイング、今シーズン幕開けの「イル・トロヴァトーレ」試写を拝見しました。

ピーター・ゲルブ総裁もMETライブビューイングもほぼ10年。オペラ畑出身ではないゲルブさんが、お得意の映像戦略で最初から勝負に出たわけで、10年続いているということは吉と出た、といっていいでしょう。

その記念の年のオープニングですから手抜かりのあるはずもありません、

主役はもちろん最多出演のネトレプコで、お相手は注目株を脱して次の段階に来たヨンフン・リー。その恋敵は脳腫瘍で心配されたディミトリ・ホヴォロストフスキーの劇的復帰、アズチェーナはメトでこの役といえばもう何十年もこの人というドローラ・ザジックと、事実を並べるだけで宣伝コピーになってしまうような面々が並んでいます。

なかでもホヴォロストフスキーが出てきた時は、もちろん大喝采でドラマは一旦お休みで答礼するほどでした。

彼はほぼ大丈夫なようで、もう少し仕上げの放射線治療をして一段落のようです。

幕間に最多出演ネトレプコの主な役柄の回顧場面が放映されていました。当初の頃の「清教徒」も一瞬出てきましたが、さすがに凄かったですね。「とんでもないのが出てきた」という感じを思いだしました。

その後体格もお声も随分と変わり、今回のレオノーラは重めの声でどっしりと。もう押しも押されぬ大ベテランですからね。貫禄です。

オペラにおける映像戦略、オーケストラにおける自主音源管理など、ビジネス面での重要さは言うまでもありませんが、それによる音楽や演技の面の影響も少なくはありません。

一番遠くの客席にも響くような声と演技だけでは済まず、高解像度映像のアップに耐えうるビジュアルとそれ用の演技、ハイレゾで高次倍音までコントロールされた発音が声楽も器楽も要求されます。

メットは、あの大きな客席数をうめ続けるだけでなく、他の面でも後戻りは許されないでしょう。1953年生まれのゲルブやゲルギエフはもうしばらく先頭を走りそうです。
7-067  COLUMBUS and 62 ST