昨日は英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2016-17シネマシーズンの目玉バレエ「ウルフ・ワークス」の試写でした。全12本のうちオペラとバレエが6本づつという、バレエにも重きが置かれた本シリーズ全体でも中心とも思えるものです。


2015年に制作され各方面で好評を得たものの再演。ヴァージニア・ウルフの小説をもとにウェイン・マグレガーの振付による3部作。トータルで3時間を超える大作。


音楽関係では、何と言ってもマックス・リヒターが音楽をつけているのが話題で、実際世界各地での彼の諸作品のダウンロード数やヒット数はクラシックの範疇を超えたものになっていて、ポップス級です。特に出身地のドイツや中心的活躍地のイギリスではそうで、日本やフランスでの知名度はいまいちかもしれません。


マックス・リヒターはロンドンの王立音楽院で作曲やピアノを学んで、ルチアーノ・ベリオにも師事していますから、バリバリのクラシック系現代音楽の作曲家です。著名になったのはヴィヴァルディ四季の再構成版やら睡眠音楽などで、そういう意味ではブライアン・イーノとかスティーブ・ライヒなどに近いミニマル、アンビエント系とも言えるでしょう。日本で言えば久石譲さんとかの立ち位置に近いですか。


ラ・フォル・ジュルネで庄司紗矢香さんがこのリヒター版の四季を取り上げたり、ヒラリー・ハーンなどもよくやっていますから、クラシックでも一部の方にはすでにすっかりお馴染みだと思います。


このたびの「ウルフワークス」の音楽もミニマル系を元に自在に展開し、今日の感覚に合った音作りで好評を博しています。


このシネマシーズンの特徴の一つの関係者の詳細なインタビューで、リヒターもピアノを前にアナリーゼをしてくれます。ヒットするにはわけがある、と言いたくなるような見事な構成と説明ですが、驚いたのはその説明するときのピアノの音色。実際の作品では管弦楽と電子音が中心なのですが、彼の弾くピアノでもうその音色感がでているのです。ピアノスコアを作っている段階で、よほど明確な音色イメージがあるのでしょう。単純にピアノが上手いとも言えますけど。


第3部フィナーレのヴァージニア・ウルフの自伝的生涯の悲劇的結末に至る部分は、まあ普通に叙情的に美しいですけれど、私は特に第2部の盛り上げ方の多彩さが楽しめました。あの手この手と、そんなことをすっ飛ばす感覚的高揚感のバランスが素晴らしいです。


紗矢香さんやヒラリー・ハーンで彼に興味を持った方。ぜひお出かけください。


まさにイギリスらしい、ロイヤル・オペラらしい、同シネマシーズンらしい作品で、日本ではなかなか感じられない実感が押し寄せてきます。特にバレエというものに苦手感、ネガティブな先入観をお持ちの方にお薦めです。文学やら映画やら音楽やら多彩な入り口が準備されている作品ですから。
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