ジョージアの作曲家ギア・カンチェリに「風は泣いている」というビオラ協奏曲があります。キム・カシュカシアンがデニス・ラッセル・デイヴィスといいCDを作っており、私はこれが好きで何かというとご紹介してきました。西村朗先生が「現代の音楽」でも、この演奏を取り上げておられましたから、お聞きになった方もいらっしゃるかもしれません。

カンチェリは、ビオラは好きらしく、他にもいくつか作品があり、なかでも「ステュクス~ヴィオラ、混声合唱と管弦楽のための」が大作です。

以前、飯森範親指揮東京交響楽団でやられましたが、そのときはニコライ・ホジャイノフがショパンを弾くは、メインはドビュッシーの「海」だは、で何となく埋もれた感じで見過ごしてしまいました。

それが今回日本センチュリー交響楽団で堂々とメイン曲として改めて飯森範親指揮で取り上げられました。

ビオラは同団首席の丸山奏(かなで)。カシュカシアンだのバシュメットが弾いて立派なCDまで残していますから、気にする必要は無い、といっても大変ですね。我々は無神経に「それと比べてどうのこうの」と、わめきますし。

しかし、実際はこの丸山奏のソロは素晴らしかった。「三途の川を上から見渡してすべて分かっている」というような役割のパートを、全く純粋、献身的な演奏で顕しておられました。

コーラスのバッハアカデミー合唱団(合唱指揮本山秀毅)も良かった。ジョージア語がメインで最後が英語という、それだけでも、めげそうなパートですが、それぞれがよくしゃべってまっすぐにメッセージが来ます。よくあるような「横と合わせて無難に」ではなく、こんな責任の取れた歌はなかなか聴けません。

そしてオーケストラも渾身の力演。多人数の下手にかたまった打楽器群もうるさくならず、デリケートなバランス感で支えていました。
219回定期
2017年9月15日飯森範親指揮日本センチュリー交響楽団 ヴィオラ独奏丸山奏
©s.yamamoto

要するに、これらをとりまとめた飯森範親が大変な名演をしたということです。東京でも大阪でもやったくらいですから、彼も是非紹介したかった曲なのでしょう。その表現欲求が表に出すぎず、曲のあるがままの姿が感じられたのですから、文句の付け所がありません。

稀有の達成に立ち会えて幸いでした。