舐めるように読み進めている濱田芳通さんの「歌の心を究むべし」(アルテス・パブリッシング)

まずは「前書き」とか「後書き」とか無いのがいいです。そういうものでクドクドと読者や編集者へのゴマすりなど書いてあると、すぐにばれて中味を読まなくても済みますが。

で、のっけからルドルフ・シュタイナーの著書からの引用文から始まります。「・・・・音楽は音と音の間に存在しているからです!・・・・」

この後も多数の本からの引用がたくさんでてきて、それだけでも大変な音楽愛好者に対する基礎的文献リストということになり、貴重です。

チェリストの藤原真理さんが、「坂本龍一さんってどういう音楽家ですか?」ときかれた時に、「音と音の間に音楽がある方です」とお答えになり、隣りにいた坂本さんは「褒めすぎです」と言っておられました。

偉い先生方のおっしゃることは似ていますが、その意味をちゃんと知りたい方は本文を熟読玩味してください。

次の章はオフビートについて。ジャズなどの最初のレッスンで、「要するに2拍目と4拍目をちゃんとやればリズムが回りだしてグルーブ感がでるんだよ」と言われるあれです。アフタービート。そのことがちゃんと説明されています。

次はナポリと日暮里。この一字違いの場所に濱田先生はご縁があるそうで、お好みの食べ物もピザ。と、我々にも理解できるエピソードを混ぜながら、フレスコバルディの著書などから濱田ミュージックの真髄の部分が語られています。

濱田芳通さんは周囲から濱田先生と呼ばれています。先日の「ポッペアの戴冠」は演出が彌勒忠史さんでしたが、彌勒さんも「濱田先生」と呼んでおられました。基本的に対等の立場の演出家でもです。
DSC_0241
濱田さんのように誰にでも丁寧にフランクに対応される方は、よくご自身のことを先生と呼ばせないようにしたりしますが、それも人様に強制する話でもありませんね。

だから、最初の3章でも顕なように、これだけのことを教えていただけるなら、やはり先生と呼ぶしか無いでしょう。