私が学生時代に龍吟社というところから、バッハのマタイとヨハネ受難曲の大判のボーカルスコアが出ていました。ポケットスコアより大きく見やすくて日本語訳までついています。その上、とても安価でしたので、すぐに買ってよく眺めていました。

その編者が濱田徳昭(はまだ・のりてる)先生、合唱指揮者として著名で芳通さんのお父君です。

濱田芳通さんにラジオ番組のゲストに出ていただいた時に、このボーカルスコアを持参し、写真も一緒に撮ってもらいました。お目汚しで申し訳なくは思いますが、その楽譜の貴重な写真なので、恥を忍んでお載せします。
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その番組を収録し、とりまとめてくれたのは東京音大作曲家出身のメグ。その東京音大は濱田徳昭先生のご祖父が始められた学校です。

と、いうわけで小さな一番組のことでも濱田家4代の厚みがバックにあるわけで、これはまあ、やはり芳通さんも「先生」とよぶしかありませんね。

で、ご著書の方の続きですが、シャロン・ストーンがお好き、イタリアに行くとまずピザを食べてCD屋でミーナの新盤を探した、アントネッロの初めてのNY公演でミュージカルに開眼、と続きます。

もちろんそこから本格的な話に入っていきますから、後は皆様ご自身でどうぞ。特に濱田さんの専門領域とそれ以後の時代を分けることとしての対位法について、は多分古楽理解の肝となるところでしょう。要するにモノフォニーからポリフォニーへの変遷。

あと、こういう一節もあります。「人間の脳の構造は生物の進化を年輪のように刻んでいる。やはり昔のほうが動物的な脳の働きが強く(というか人間的な脳の働きが弱く)直感に長けていたということはあるらしい(しかもデカルト=ニュートン時代までというから、結構最近までである。)動物能のほうがミューズとのやりとりがスムーズなら、そんな時代の音楽だから自分はバロック以前の音楽が好きなのか、とも思う。」

確かにニュートン古典力学までなら、「りんごが落ちた」とか直感的に分かる気もしますが、それ以降の「それは若干不正確なところがある」と相対論やら量子論になってくると、直感だけではどうにもなりませんものね。

ですから、「バロック以前よりもどうしてもバッハ以降がお好き」という方は人間的な能が発達していて頭が良過ぎる、ということになるのかもしれません。