次に濱田芳通さんたちの音楽に東京圏で接することのできる機会は、2017年12月13日(水)14日(木)両日に浜離宮朝日ホールで開かれる「語りと音楽でつづる天正少年使節の物語」です。
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これに関する詳しい記述が、本の第8章「桃山ルネサンスの南蛮音楽~日本人のアイデンティティ」にあります。

16世紀天正年間に九州のキリシタン大名がローマ教皇に4人の少年を中心とした使節団を派遣し、彼らはヨーロッパでかなりきちんと音楽を学び、帰国後秀吉の前で御前演奏をおこなったりもした。

濱田さんは20年以上前にコンサート企画でこの辺りに目をつけ、その後すっかりのめり込んで、今や「ライフワーク」と公言しておられます。

西洋初期バロック音楽を、単にぽつんと離れたものとして学ぶだけでなく、日本とのからみも研究して、それを逐次コンサート企画にし、本の一章を使ってテキスト化もしておられるわけです。

クラシック系ファンから見れば濱田芳通さんたちの活動はモンテヴェルディとかのほうが本命で、こういった日本絡み南蛮音楽のほうは、それに伴うおまけのように思えるかもしれませんが、上記2日間の浜離宮コンサートは1日はすでに売り切れ(残り1日も残席僅少)という人気です。550席の同ホールが売り切れというのはなかなかの数字。先日の「ポッペアの戴冠」は600席1回公演で売り切れというわけではなかったようですから、この南蛮ものがいかに人気企画が分かるでしょう。

それは大変結構な話ですが、モンテヴェルディイヤーで豪華出演者、その方々の手売りもあっても「ポッペアの戴冠」は売り切れないというのは、やはりオペラもモンテヴェルディも大変ということですか。

よくオペラ関係者が「オペラもオーケストラくらい売れてくれれば」とおっしゃいます。オーケストラが苦心惨憺経営しているのを日夜見ていると、とてもそんな風にも思えませんが、やはりプロのおっしゃることは一面そうなのでしょう。

で、この本を読むくらいの皆様は、今後は「南蛮もの」もモンテヴェルディも、どちらも行ってくださいますよう。

本の方も次の章は「ラブ♡モンテヴェルディ~第三の技法」と続きます。この章で面白いのはジュゼッペ・ヴェルディのモンテヴェルディへの評価がかなり低い、という話。「古典作曲家でベスト6をあげろ」という問いに対してヴェルディは「モンテヴェルディは正しい作曲の仕方を分かっていないので除くべきだ」とお答えになったとか。

こういう話はいいですね。大作曲家をひたすら崇め立てて、勝てば官軍の結果論で言葉を飾って褒めそやすより、それぞれが考える切っ掛けになるだけでも。

ピエール・ブーレーズが「ショスタコーヴィッチは評価しない。第一下品だし。」というのを思い出したりします。

浅学非才、凡人凡庸な私は、ヴェルディもモンテヴェルディもブーレーズもショスタコーヴィッチも好きですが、こういう発言を聞くとヴェルディやブーレーズは益々好きになります。

もちろん、本命のモンテヴェルディの技法論が本当に素晴らしいので、そちらもどうぞ熟読玩味のほど。