来週の新国立劇場はドニゼッティ「愛の妙薬」。<<アイミョウ>>といえば何と言っても作られた経緯が傑作。

本来の新作オペラが、よくある話で開幕1ヶ月前になっても完成せず。腕利きの支配人は速筆で定評の有ったガエターノ・ドニゼッティに、すげ替え新作の作曲依頼。さすがに新作台本書き下ろしというわけにはいかないが、流用で台本を何とかして作曲期間は約2週間。しかも初演は成功でロングラン。

大天才が何年もかけて練り上げて作っても初演失敗やそのままお蔵入りがいくらでもあるのに、この「愛の妙薬」はそのままちゃっかり生き残り、今月も東京人としてはメトライブビューイングでも新国でも拝見できるような著名作品になっているのだからすごい。
001
大体がドニゼッティは50歳位のそれほど長くはない生涯なのにオペラは70くらい作っている。当然天才だろうが、速筆が売り、というビジネス戦略を実践する人は昔も今もいらっしゃる、という典型だ。

テキスト原稿でも作曲でもそうだし、演奏家でも「初見にはめっぽう強く、直前依頼もOK」という方もいらっしゃる。

まあ、あまりアーティスティックには見えないから、そういう方々は声高にはおっしゃらないのが普通だが、頼む立場からすると、一応このタイプご一行様は頭にリスト化されていると便利。