新国立劇場の委嘱新作「紫苑物語」に対して、同時期に東京二期会は黛敏郎の「金閣寺」の上演。2300席の東京文化会館で3回公演だから新国立劇場4回の紫苑物語と同等のチャレンジということになる。

意義から言っても、初演も大事だが、再演や3度目以降を積み重ねて作品として定着させるのも、また大事。

金閣寺は日本初演は難産で、音楽家もマネジメント関係者もポケットマネーを出しあったりして何とかしたわけだから、このような積み重ねで作品を成長させれば、その初期の苦労も報われるというものだ。

特に今回の二期会版はフランス国立ラン歌劇場との共同制作で、日本の歌手もあちらの公演に出演するという本当の共同作業が行われてのことで益々有意義。ラン歌劇場はそんなに著名というわけでもないが、かなりの名門である。

ベテラン宮本亜門の演出に対し、指揮が新鋭マキシム・パスカルというのも注目点。すでにスカラやパリオペラ座では評判を得ているし、この仕事の前からミシマは読んでいた、というインテリ。

オペラも現代音楽も興味が無い方でも、石川淳やら世界的新人指揮者やら、なんらかの引っ掛かりはみつかりそうな目玉の多い両公演。話の種にだけでも必見だろう。

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