新国「紫苑物語」、二期会「金閣寺」が特別イベントの趣があるのに対して、こんにゃく座は淡々とマイペースでオペラ上演を続けている。

今回は新作で「遠野物語」。日本文学の金字塔を原作にしているものが見事に揃った。石川淳vs三島由紀夫vs柳田国男。

前2者の総座席数7000づつに対して、こんにゃく座はキャパ300の俳優座で11回だから約3000席。オーケストラではなく器楽アンサンブル4名の室内オペラということでいえば大変な数字だが、こんにゃく座にとってはいつものこと。

いつもと違うのは作曲が共同で吉川和夫、萩京子、寺嶋陸也の3人。緋国民楽派というグループを組んでいるお三方だが、その定例の会以外に更にオペラまで共同で作ろうというのだから、よほどウマが合うのだろう。

言われてみれば複数の話が並ぶ遠野物語は共同作曲には合っているかもしれない。

昨日GPを拝見したが、成功作といい切っていいと思う。面白い。かなり長いが、いつもの萩京子、林光の音楽の魅力と同じような違うような塩梅が味わい深い。
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新国立劇場でボエームとかトスカしか見たことのない人が、「吉川和夫という人の部分が一番良かった」とか、コチコチのこんにゃく座しか知らない取り巻きが、「三島&黛って実際見たらすごいのね」とかなると、より楽しいと思うが。

紫苑物語、金閣寺のチケットをお買いになるくらいの皆さんなら好奇心も耳もお持ちだろう。吉川、萩、寺嶋という日本を代表する充実期の作曲家たちの音も是非どうぞ。