「平成最後の」などという言い方を毛嫌いする知性派の先生方はクールに過ごしていただくとして、それ以外のクラシック愛好者で、平成最後に読むべき本ははっきりしていて、その名も「平成音楽史」

片山杜秀(かたやま・もりひで)、山崎浩太郎両先生の対談本だ。

我々ごときでも、年365日音楽を聞き、毎日それについて書くか話すかしている生活を何十年も続けているのだから、その蓄積はそうとうなもの、とつい勘違いしそうになる。

それを簡単にふっとばしてくれるのが片山、山崎両先生で、その蓄積質量は少なく見積もって我々の数十倍、多分数百倍だろう。本当のプロはこのくらい差があるのだ。

片山先生は資料のあまりの多さに体育館のようなところに住んでいるという噂をきいたことがあるし、山崎先生はこれははっきりとクラシックの新譜すべてを紹介する番組を長年やっておられる。これだけでもスケール感がわかる。

早慶両校のご出身者はクラシック音楽界にもたくさんいらっしゃるが、お二人はそれぞれの音楽鑑賞系サークルのご出身。早稲田には池田卓夫、東条碩夫、慶應には許光俊、宮崎哲弥などがいて山崎さんが早稲田の、片山さんが慶應のエース格ということになる。

あれだけの才能で学生時代からの蓄積なのだから、こういうことにもなるわけだ。

以前、クラシックでさえも年末にはテレビやFMで年間回顧鼎談とかが行われていた。野村光一、遠山一行、大木正興といった諸先生方。この方々がマタチッチN響がどうしたの、「小澤のマタイって言われてもねー・・・・」などとやっておられたものだ。

それらはとうに無くなり、今はミュージックバードで田中美登里プロデューサーのご進行で片山、山崎先生が話す。多少の変動はあっても結局はこの両氏で落ち着く。年末だけではもったいないということで夏の特番とかも作られ、それを元にこの本は作られている。

聞き手の田中美登里プロデューサーにしてからが幼少からラジオの番組制作、司会などをめざし、そこから逆算して芸大楽理にいらっしゃったというのだから、凡百行き当たりばったりの我々とはできが違う。

その特別なお三方の丁々発止のトークはレベルが違いすぎて私には直接参考にできるところはないが、聴取者、読者の皆様は大所高所からの30年の俯瞰で今後の鑑賞生活に資することは山ほどあるだろう。

昨日、二期会エロディアードの本番前後にこの本を読みふけっていたら、山崎浩太郎先生がすぐそばのお席にいらっしゃった。よほどサインをいただこうかと思ったが、ぐっと抑えた。小型で柔らかい製本で携帯もしやすい。あらゆる面で必読書である。

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