今年もラ・フォル・ジュルネ東京で、ヴァイオリンの梁美沙(やん・みさ)さんの会にうかがったのだが、当ブログの昨年の同系記事がブログ内ランキングには入ってきていた。関係者の方とか見てくださったのかもしれないが、ともかく今年のものを。

コトの経緯はあるが、ともかく吉例として毎年こういうことになって、あるアーティストを定点観測できる貴重な経験になっている。

と言っても、とりたてて親しくしているわけでもなく、どこかで一度くらいご紹介いただいたかもしれない、という程度。

その彼女と本番直前のエレベーターでばったりお会いした。自信なさげに「平井さんですよね?」とのお言葉。だが怪訝そうな表情ではなく表情はスッキリとした笑顔。

全く光栄なお声がけに感謝して、二言三言話したあと本番を拝見。ブラームスの2番のソナタと、ドヴォルザークのソナチネ、それにモーツァルトの「泉のほとりで」のヴァリエーション。

ブラームスのソナタが始まった時、そのお会いした笑顔と全く同じ印象の音楽が吹き出てきたのに驚いた。

まあ、本当に音楽も人なのだ。

それはそうだが、誰も彼もそういう印象ではなく、彼女の音楽は、ポジティブで明るく人にまっすぐに飛び込んでくる。

やはり還暦も過ぎると、こういう音楽はありがたい。したたかな、あの手この手の戦う音楽も面白いが。

もう1プログラムはブルッフのスコットランド幻想曲。

私はこの曲は特に好きでもなく、というよりは苦手な方で、生涯聞けなくても惜しくは無い。

私もそうだが、世の中でも以前よりは演奏頻度は減っているのではないか。まあきれいだけど・・・・という程度で。

よりによってそれを昨年に続いて今年も彼女のソロで拝聴することとなった。主催者に頼まれたのか、本人が選んだのか。

なんでもいいから他の曲をやってくれればいいのに、とぶんむくれでうかがったが、聞けばやはり彼女の温かい演奏でしみじみ弾かれると「まあ、こういう音楽もあっていいか」となり安定した技巧と昨年とは違ったアプローチも見えたりして、結局は満足感を持って帰路についた。毎年うかがう理由が、ようやくわかってきたような今年の演奏だった。

190505梁美沙LFJ